セルゲイ・ポルーニン ー 後日談と現在

前回、英国ロイヤル・バレエ団を突如辞したポルーニンがモスクワやノボシビルスクを拠点に活動と書いた。このロシアでの活動期間は長くは続かず、結局ロンドンへ戻ったらしい。独自に企画した公演を実践する一方でロイヤル・バレエ団とも共演してもいるそう…

人と神の狭間で —— 鬼才のバレエダンサー、セルゲイ・ポルーニン

ドキュメンタリー 映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(2016年) 原題はDancer、監督はアメリカ人Steven Cantor。 芸術的伝統と教師に対する絶対的服従・規律が不文律のバレエ界にあって反逆児・問題児(bad boy)とよばれてきたポル…

片山九郎右衛門は芸も人柄もすばらしい

「観世流能楽師シテ方片山九郎右衛門さんの 能はゆかしい おもしろい」 2017年10月4日、高槻現代劇場(大阪府高槻市)午後2時—4時 前半は楽屋ウラ話っぽい、気楽に聞ける談話。それでいながら能という芸術の真髄にふれていて傾聴にあたいした。 まだ二十代の…

梅若玄祥に魅せられて

9/30(土)13:00(開場 12:00) 京都 秋の梅若能 場所:京都観世会館 仕舞 通小町:河本望 地頭…会田昇 能『竹生島 女体』:梅若玄祥、井上貴美子、角当直隆、福王知登、喜多雅人、是川正彦、茂山千五郎、杉市和、曽和鼓堂、河村大、前川光長 地謡…角当行…

始原のことば・声

横浜能楽堂+ジャパン・ソサエティー<NY>共同制作作品 「SAYUSA-左右左」 横浜能楽堂 14:00~15:00 能の伝統的手法を取り入れた、新たなコンテンポラリーダンス作品。 日本研究の第一人者ドナルド・キーンの原案指導のもと、NY在住のイタリア…

演劇 −— 身体・言葉・ハイテク舞台装置の共同作業にもかかわらず想像力が飛翔できない

シェイクスピア劇『嵐 (Tempest)』、2017年夏、Barbicans劇場(London)、Royal Shakespeare Company (RSC) による上演(6月30日 — 8月18日) https://www.rsc.org.uk/the-tempest/から無断借用。 7月8日(土)マチネ観劇。約8千円。 ————————————————— シ…

森川劇団は見ごたえあり!

2017年7月29日、池田呉服座 明日が千秋楽、せっかくいい劇団にめぐり会えたのにもう終わりだ。太夫元、座長、副座長をはじめみなさん好感がもてる。それから気になるのが新入り座員、一代新之助。この人、身振り手振りがなんとも美しい。舞台上の動きがすべ…

歌舞伎雑感 —− 仁(ニン)と芸の寿命

2017年七月大歌舞伎、松竹座 【夜の部】 舞踊『舌出三番叟』(正式名称[本名題]は『再春菘種 またくるはる すずなの たねまき』 鴈治郎、壱太郎 四代目鶴屋南北『盟三五大切』 仁左衛門、時蔵、染五郎、鴈治郎、松也、ほか ================…

男と女が入れ替わる(gender role reversal / gender fluidity)

森川劇団 2017年7月 池田呉服座(大阪府池田市) 7月20日お芝居外題『変な男と変な女』 主演:劇団座長 森川竜二・劇団「絆」座長 錦連 この芝居始まってしばらくはよその劇団などで何度か見たと思った。しがない茶店を営む老婆が土地のヤクザから借金と取り…

ある能公演からの連想 ー 見え隠れする物語の連鎖

片山定期能 7月15日(土)12:30~16:50 京都観世会館 能「張良」武田邦弘 狂言「仏師」茂山良暢 能「松風 見留」片山九郎右衛門 (狂言の前後に片山伸吾、梅田邦久らによる仕舞が二曲) 10分の休憩2回を含む4時間あまりの公演。中身も濃かった。(上記演目…

(国際)人文系学会での発表のあり方

今年は6月と7月、アテネ、ロンドンで口頭発表させてもらった。自分のことは棚に上げての発言なのだが、毎度思うのは口頭発表といういわば演技の舞台であらかじめ用意した台本をそのまま読み上げる人が今も絶えない。話の内容が聞き手の関心事であるとないと…

シネマ歌舞伎『東海道中膝栗毛』--- コピーはオリジナルに劣るか

2017年6月上映(6月14日、神戸国際松竹) 昨年8月の舞台は見ず仕舞ながら映画版は大いに楽しめた。(恥ずかしながら原作は原文、現代語訳ともに未読だったので岩波文庫で今読み始めたところ。) 市川猿之助、市川染五郎の共演はさすがこれからの歌舞伎を牽引…

多様な形態をもつ物語(俊徳丸伝説)の宇宙、その一端を辰巳萬次郎の舞台にかいま見た

平成29年南都春日・興福寺古儀 薪能 (第二日 2017年5月20日) 11時~ 春日大社若宮社 御社上がりの儀 能『花月』金春穂高 17時半~ 興福寺 南大門跡・般若之芝 南大門の儀 能『杜若』シテ・観世喜之、ワキ・小林努 狂言『附子』茂山千三郎、丸山やすし、網…

2017年5月姫路城薪能 狂言『察化』、その題名の由来にこだわって

「察化」ということばは初めて耳にしたせいか、気になって仕方がない。今回の上演はおそらく主に大蔵流が使う台本に従ったのだろうと思う。『日本古典文学大系42 狂言集 上』(小山弘志 校注、岩波書店、1960年、331-341頁)に収録されているのと同じものの…

2017年5月12日(金)第47回 姫路城薪能

姫路薪能姫路城三の丸広場特設舞台で上演された(午後6時時-8時15分)。 当日夜8時から雨だという気象予報。でもまあお天気ばかりは運任せにするしかない。駅から会場に向かう途中道順をきこうとわたしが話しかけた人もおっしゃっていたが、過去にも雨に祟ら…

笛方 藤田六郎兵衛(ふじた ろくろびょうえ)は多面的なアーティスト

今年(2017年4月8日)に催された「篠山春日能」については別記事で述べさせてもらった。本記事はその続きみたいなもの。 藤田六郎兵衛さんの(わたしにとっては)意外な面貌について。これまで見たどの笛方も舞台では気難しそうな顔をされていた。藤田六郎兵…

篠山春日能(2017年4月8日)

演目: 能 『桜川』 大槻 文藏 (74歳、2016年7月に人間国宝認定) 狂言『魚説経(うおぜっきょう)』 茂山 逸平 能 『邯鄲(かんたん)』 浅見 真州 ========== 毎年4月恒例の能・狂言上演を初めて観劇。今年で44回目だが、能・狂言に本気で関心を…

春もまた茂山狂言がたまらなくいい

1.『花形狂言 2017』2017年3月31日 兵庫芸術化センター 演目:「蝸牛・改(改訂版)」、「かけとり~落語「かけとり」より~」、「寄せ笑い」、 「My Sweet Home~旅は道連れ~」、「狸山伏」 2.『春爛漫 茂山狂言会 五世茂山千作・十四世茂山千五郎襲名…

人間国宝・梅若玄祥は芸と演出力がともに冴える

能『安達原(あだちがはら)』白頭、急進之出 2017年3月20日、山本能楽堂(大阪) シテ 梅若玄祥 ワキ 福王和幸 『安達原』は物語の背景に都(京)の公家に仕えた乳母の悲しい伝説がある。乳母は自分が育てている姫の病を治したい思いに駆られるあまりそれと…

国立能楽堂記念行事には「演劇の巨人・渡邊守章」による解説がふさわしかった、残念!

2017年3月11日、国立劇場開場50周年記念行事の一環 狂言 『濯ぎ川(すすぎがわ)』 茂山 千三郎(大蔵流) 能 『昭君(しょうくん)』 観世 銕之丞(観世流) ———————————————————————————— 3月9日からパリ オペラ座バレエ日本公演(東京文化会館)、歌舞伎…

能楽の楽しさを堪能させてくれた「能と囃子の会」

2017年3月5日(日)大槻能堂(大阪) 午前九時から午後七時までたくさんのベテランや中堅の演者や奏者が入れかわり立ちかわり登場。これでなんと入場無料(出入り自由)でさらに美味なおこわのおにぎりつきだ。 能・狂言など古典芸能はチケットが5千円以上…

狂言はどの流派も楽しい

善竹十番<狂言・行く年来る年> 2017年2月5日 神戸市灘区民ホール 《鶏聟》小林維毅・善竹忠重・大槻尚平・前川吉也 《惣八》前川吉也・牟田素之・阿草一徳 《節分》善竹忠亮・岡村和彦 狂言を熱心に見始めてまだ1年にならないものだから「善竹」家(大蔵…

メトロポリタン・オペラL’amour de loin (『遥かなる愛』) ー「他者」と「過剰性」

Kaija Saaariaho (カイヤ・サーリアホ)作曲、Amin Maalouf (アミン・マアルーフ) 台本 2017年1月下旬上映 オペラ鑑賞はまだ不慣れなわたしだが、その華麗さで観客を魅了するメトロポリタン・オペラの映画版を楽しんでいる。毎回キャスト&クルーのレベルの高…

「童」と能・狂言 — コドモ(中学生未満)は侮れない

『初笑い親子狂言』2017年1月9日、金剛能楽堂(京都) 午前の部 『柿山伏(かきやまぶし)』 演者:茂山鳳仁、茂山慶和 『附子(ぶす)』 演者:茂山宗彦、茂山童司、茂山逸平 午後の部 『鶏聟(にわとりむこ)』 演者:茂山千五郎(正邦改め)、丸石やすし…

ポール・クローデル作『繻子の靴』ー8時間耐えたのちの感動とさらなる展開への期待

2016年12月10日ー11日、京都芸術劇場 春秋座(京都市左京区北白川、京都造形芸術大学内) 『繻子の靴』(四日間にわたる物語を描く四幕物)はざっくりいうと道ならぬ恋に燃えた男女(既婚女性ドニャ・プルエーズと未婚の騎士ドン・ロドリッグ)の物語だ。だが…

劇団花吹雪が『ワン・ピースOne Piece』のパロディーを上演すると。。。

市川猿之助が『スーパー歌舞伎 II ワンピース』と題して尾田栄一郎・作manga『ワンピース』を歌舞伎で上演すると知ったときは、冗談かなと思い、無理して若者受けすることないだろうにと不満に感じた。 しかし生の舞台は未見ながら先月(2016年10月)と今月…

大衆演劇 ゲスト公演 その意義を問う

「劇団花吹雪」はその名称どおり公演内容が華やかでウィットに富んでいるのだと最近ようやく気づいた。関西公演があればぜひ観劇を重ねて応援したい思いでいっぱいである。 今月(2016年11月)はわたしにとって足場のいい京橋羅い舞座だ。8日の昼公演を見た…

野村万作85歳 ー 枯淡の芸

『万作萬斎狂言』兵庫県立芸文センター 2016年10月15日 野村万作「月見座頭」、野村萬斎「吹取(ふきとり)」 万作氏の現在のお姿を拝見したくて観劇。恥ずかしながらこれまで野村父子の生の舞台を見たことがなかった。 はるか昔のこと、TVで万作演じる「釣…

演劇集団「大川興業」による<暗闇演劇>

劇団第40回本公演ーThe Light of Darkness 作・演出:大川 豊(大川興業 総裁) 2016年10月8日ー10日、神戸アートビレッジ(神戸市兵庫区新開地)

浪花劇団「蛇々丸」は孤高の人

かつては「浪花劇団」という旅役者の正統派の伝統を継承する劇団で四人の若手(現在は三人)がどう成長するか、それが楽しみで応援していた。しかし新之助座長の「自己中」ぶりに辟易して観劇しなくなった。そんな次第でベテラン役者蛇々丸と浪花めだかの芸…