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粒ぞろいの一竜座なのになぜか客足が伸びない・・・

今日12日高槻は千鳥劇場。一竜座は前回見てから1週間あまり過ぎた。久々の観劇に心はワクワク。劇団にとって千鳥劇場は初乗りだが、きっと地域のファンが新しくできているだろうと期待していた。だが、もう中盤戦なのに客席が半分も埋まっていない。半年前の6月、同じく初乗りの浪速クラブを大いに湧かせたことを考えあわせると、こんな不入りは信じられない。

 

今日の芝居は大衆演劇でわりと上演されることの多い「佐太郎笠(佐太郎時雨)」だ。耳障りだろうが、あらすじを紹介したい。土地の代官と組んで悪事にいそしむ親分、法華の長兵衛(白龍)の一家では子分たち(暁龍、風月光志、とくたろう、一竜力)が親分の快気祝いの準備に忙しい。この悪の親分は悪代官に頼まれて一の子分佐太郎(龍)の恋人である芸者、こたきをむりやり代官のめかけにしようと企む。抗議する佐太郎を一家から追い出す親分。邪魔者がいなくなると生来欲深い親分は前々から横恋慕していたこたきを自分の女房にしてしまう。信頼していた親分の裏切りに怒る佐太郎はのちの復讐を決意して一年の男修行に出る。その一年がたち、男を磨いた佐太郎がもどってくる。

 

さて、この芝居に登場する惚れた同士は佐太郎とこたきだけではない。もう一組、佐太郎の弟分三之助(光司)とお花(一竜きらり)がいる。悪の親分はこの二人の仲をも引き裂き、お花を代官のめかけとして差し出す。

 

親分から手ひどい仕打ちをうけた佐太郎と三之助は力を合わせて復讐をはたす。佐太郎は恋人を奪った親分と利己心からその親分に鞍替えした恋人こたきを斬り殺す。一方 三之助は代官に囲われていたお花を救い出し、めでたく二人は結ばれる。

 

しかしこれでは佐太郎がひとりぼっちだ。が、心配ご無用。佐太郎には佐太郎じしんは好いていない芸者、小鈴(竜美獅童)が以前から佐太郎に強く思いを寄せていた。結局この二人も結ばれることになる。

 

芸達者な竜美獅童が演じる小鈴はこってりと面白キャラに仕上げられている。ひつこくまといついてうんざりさせられるような女だが、それでいてかわいいと思えてくるから不思議だ。(ただし、相手役の龍はいやいやカップルになっているようすがありありだったが。)

 

さらにこの芝居をコメディっぽくしているのはストーリーの中程で現れる身分卑しからぬ侍(座長あおい竜也)の存在だ。旅修行に出る佐太郎を追う小鈴にむかって自分が出雲の神さまよろしく二人の縁を結んでやると宣言する。この侍は結末近くに再登場すると自分は八代将軍徳川吉宗だと身分を明かす。そのうえで天下を治める将軍の絶大なる権威を発揮して佐太郎と小鈴の仲をとりもつ。

 

このように突如として紛糾する事態が解決するのは葵の御紋入りの印籠で有名な水戸黄門談と同じだ。無理筋で一挙に問題を解決にみちびく手法は西洋の古代ギリシャ劇ならデウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)とよばれるが、日本にだって同じような発想があるんだ。

 

ところで、今回気になったのは劇団花形龍の演技である。かれはいつの場合も芝居が一本調子になりがちではないか。今日は主役で佐太郎を演じたが、その存在の重さが表現できなかったように思う。弟分を演じた光司と入れ替えた方がよかっただろう。はまだ若い。やがて劇団を率いる日もそう遠いことではない。若手でいる今こそ謙虚に芸歴の上で先輩である父親あおい竜也、白龍、竜美獅童風月光司らの芸に学び、それを将来の肥やしにしてほしいとねがう。現在のようにいつもヒーローまがいの台詞回しに安住していたら一竜座の将来が危ぶまれる。そんなことを危惧するのは私だけだろうか。