一竜座 千鳥劇場千秋楽 楽々大入り ヨカッタ!

驚いた。場内には大入りの札が。みなさん昨日までどこへいっていたのか。ひょっとして強敵が乗っている羅い舞座京橋あたりかな?

 

今日は2部構成で一時間半あまりの芝居「弥太郎笠」と舞踊ショー。外題が昨日と同じだが、弥太郎役の座長はそのままで鳥追い女はいつもどおり白龍だ。(あいにく私は50分遅刻したのでいい場面をかなり見落としたはずだが、)入場したのが弥太郎(座長)に執拗に追いすがる白龍(鳥追い女)のくだりだった。舞台も観客席もすごい盛り上がり。さすが名役者ふたりの掛け合いのおもしろさは誰もかなわないだろう。それに刺激されたわけではないだろうが、風月光志の喜劇人根性が爆発した。かれは九州出身らしいので以前の役者稼業でそれと自覚しないまま「九州俄(博多にわか、肥後にわか、佐賀にわかなど)」の伝統を取り込んでいたのかもしれない。ちなみに「俄」は江戸末期から明治にかけて流行した演芸で、プロの芸人の技をまねて即興で演じるコントふうの短い芝居をさすのだそうだ。「大阪俄」が現在もつづく上方演芸の基礎になっているとか。千秋楽になってようやく一竜座の本領が全面的に発揮された。私の記憶に焼きついている(半年前の)浪速クラブの興奮がよみがえってきた。ウレシイ!

 

第2部舞踊ショーでは白龍(女形)ととくたろう(立役)が愛舞踊を見せてくれた。愛し合う二人の道行きがテーマーの踊りだったが、私にはとくたろうの父親である白龍にむけた眼差しに同じ旅役者として父が貫く孤高の生きざまに対する尊敬の念を感じさせられた。白龍の役者としての過去は知らないが、かれの役者としての生き方の基本は一匹狼だと思う。そういう孤高の精神が白龍の持ち味だし、強みだと思う。一座を構え、あるいは所属することはプラスとマイナスの両面があるだろう。白龍は一人劇団を選んだ。その点で幼ないころから大衆演劇の世界でいたわけではないあおい竜也と白龍はたがいに共感を覚えるのではないだろうか。とくだろうはまだ16歳だが、父と二人でフリーランスの役者稼業を数年経験するうちに父の一匹狼的精神を理解し始めているにちがいない。とくたろうは将来一座を立ち上げるか、どこかの劇団に入団するかもしれない。それでも現在のとくたろうが父の生きざまを身近に接することで閉鎖的ではない一匹狼の心を培うことになるのではないか。それはまたかれの今後の役者としての成長にも資することだろう。

 

座長は来月1月、奈良県榛原の「やまと座」公演に話がおよぶとヤル気満々でなさそうになる。榛原が関西有数の寒冷地なのでしきりと一竜座は冬眠する、冬眠するとおっしゃる。私は2時間かけてときどき観劇にいくつもりなので冬眠しちゃダメだ!熱気あふれる舞台を期待している。