梅若玄祥(シテ) 新作能『紅天女』、能とタカラヅカは反りが合わない!

2017年12月25日、京都観世会館にて。

 

客席に能楽ファンがいない。それも当然か。両隣にいた観客はまともな能学ファンなのかプレ・トークの間ずっと寝ていた。

 

揚幕から出てきた発声不良女優さんのセリフにはドン引きしかなかった。ええッ<自然と人間の共生>だって?

 

この発言が革共同革マル派日本革命的共産主義者同盟 革命的マルクス主義派)の洗礼を受けた枝野幸男率いる「立憲民主党」に代表される現代ニッポンの「野党」のぬるま湯的綱領ならいざ知らず。また朝日、中日、東京新聞が先導するニッポンのマスコミの万年不変の社説なら認めよう。

 

いつの時代であれ能は自然と人間の共生だの、近代風平和主義などという締まりのないお花畑イデオロギーそのものでしかない言説を唱えたりしないよ。

 

自然は人間に対して時に優しく、時に凶暴になるのは子どもでも知っていること。自然と人間との関係は複雑怪奇な葛藤の連続だ。

 

文芸が花鳥風月にばかり酔っているというのはとんでもない誤解だ。

 

おまけにこの女優さんが続けた楽屋裏話めいた言い草はあまりに次元の低い言い訳としか思えない。これがタカラヅカ大劇場なら通用するだろう。能舞台で上演中に私的な発言はありえない。

 

それはさておき、今回の舞台は地謡の面々には申し訳ないが、囃子方の楽音は響くものの台詞なしの能公演としては逸品だったと納得するしかない。