劇団 「岬 一家」特別公演(明石 三白館)

特別ゲスト駿河染次郎の歌唱を含む 顔見せショーの後、歌舞伎や大衆演劇でおなじみの芝居、『文七元結』がつづく。庶民の悲哀と喜びを綴った典型的な人情劇だが、こんな気は意図的に笑いの風味を盛り込んでいる。だが、私見ではあるが、コメディ性が中途半端だった。徹底して話の展開を喜劇化してお笑いネタ満載にすべきではなかったか。そうすることで深刻な状況でも笑いを失わない庶民の心がたくましさとしなやかさに満ちあふれているさまを浮き彫りでできたように思う。

 

ちなみに主人公、左官の長兵衛の娘、お久を演じた「松木美和」は笑劇版『文七元結』で活躍がおおいに期待できる。松木は一見控えめだ。特に文七に扮した「山脇広大」が表現力豊かなので彼のそばに立つと影が薄くなりそうではある。しかし実は松木は舞台に出たいという強い欲求から役者になった人。ちょっとそそのかせば喜劇役者として目立つはずだ。「松木美和のはちきんブログ」を見ればその人柄がわかる。とても目立ちたがりにちがいない。ご本人の郷里の言葉、土佐弁で「はちきん」とは「オトコ勝りのオンナ」。そんな言葉をブログのタイトルにしていることから推して知るべし。

 

お芝居のあとは座長の日本舞踊。正式なタイトルは不詳だが、月夜のカッパをてーまにしたらしい舞踊。大衆演劇系の舞踊とは所作がかなりことなる。日本舞踊の知識のない私がいうのもなんだが、日本舞踊としてのキレがあったように感じた。とりわけ手の動きが印象に残る。普段の公演でも毎回短い作品をぜひぜひ披露してほしい。

 

最後に駿河染次郎が登場し、昔とった杵柄 で噺家としての芸を披露。この件は別記事で書いている。

 

 <予定演目>

16日(水)

お芝居:雪の夜の物語

ラストショー:常磐津 筏の与三郎 〜  お富さん

17日(木)

お芝居:音吉出世旅

ラストショー:ニッポンワッショイ

18日(金)

お芝居:二人忠治

ラストショー:白雲の白 〜  あんたの花道

19 日(土)

お芝居:稲荷札

ラストショー:花笠音頭

20日(日)

お芝居:三吉の置き土産

ラスト・ショー大和楽 恋の風鈴  〜  夏うれしいね

(*大和楽・やまと がく=昭和初期、1930年代はじめに創設された新邦楽の一種。和洋の音楽を折衷してできた舞踊と謡らしい。動画サイトで視聴可能。)

21日(月)

お芝居:好太郎懺悔

ラストショー:花笠音頭

 

「岬 一家」は座員の数が少ないことが大衆演劇ファンの注意を引くネックになっているようだ。即戦力になる役者が複数ほしいところ。

 

そこで新規座員さんの探しどころはというと。。。最近とみに人気が下降している関西系の某老舗劇団。いくら事情があるとはいえ座長が不甲斐ないから不人気も当然だろう。ここには有能な役者がたくさんいる。中でも芸達者な某女優さん、その才能に見合わない不当な扱いを受けていて、バカな自称劇団ファンが性悪な "劇団インサイダー(♀)" の尻馬に乗ってこの女優さんをののしっている。この人を引き抜けないものか。下町かぶき組はいわゆる「大衆演劇」系劇団とはちがって商業演劇系に近い。だから某女優さん本人が在籍劇団を退団して無所属になってから岬 一家にくることができやしないだろうかと妄想をたくましくしている私。

 

なにはともあれ、19 日はお笑い満載の『稲荷札』が楽しみだ。