劇団花吹雪、怒濤の進撃 千秋楽前日

H28.09.28、新開地劇場

お芝居外題『踏切番』

 

松竹新喜劇風現代劇を下地に京之介座長大活躍でお笑いをたっぷり加味。

両座長がペアで踏切番を勤める。ある日先輩格の踏切番(春之丞)が列車飛込み自殺をはかった婦人を間一髪のところで救助する。その後事情をきこうと婦人を詰所に案内して二人は退場。すると後輩格の踏切番(京之介)が登場。そこへ先輩の妹(彩夜華 [あやか])が兄を尋ねてくる。後輩が先輩を呼び出す。事情があって芸者を稼業としている彼女は近々某社長に身請けされて妻になる旨を兄に伝える。話をするうち兄は当の社長が既婚者であり、その妻というのがさきほど自殺しかけた婦人だと悟る。人の不幸で幸福になるのは許せないと妹の結婚に大反対の兄。

 

ここからの展開は大衆演劇でおなじみの『追われゆく女』のパクリかと思えた。妹が芸者になったのも兄の病気治療費を支払うため。健康をとりもどした兄だが、貧しくてその借金をいまだに返済できないでいる。しかし(現在の妻とは離縁するという)社長の妻になればその借金も完済できる。だから妹は結婚したいという。おのれの幸せしか眼中にない妹に対して兄はきょうだいの縁を切るといいだし二人は決裂。

 

このあとは『追われゆく女』のパクリでなく劇団お得意のお笑い路線をとることに。縁切りだといった兄だが、むざむざ妹を不幸したくないと一計を案じる。後輩をヤクザに扮させて結婚相手の社長宅に乗り込み、妹に手を出せばただではおかないと脅迫して破談にしようというのだ。場面は社長宅へ転換。社長(酒井健之介)と本物のヤクザ西か見えないその友人(京誉)がいるところへ後輩踏切番が登場。先輩にけしかけられるもなかなかうまくヤクザらしい格好にならず何度も繰り返し。爆笑の連続。京之介座長はお笑い芸人そこのけの名コメディアンだ。

 

結局はこの偽ヤクザ作戦が効を奏して結婚は破談。メデタシ、めでたし。

 

ところで今日の公演でウレシイ思いができた。というのも劇団目安箱に(劇団最年少の)男優さんに関するリクエストを一昨日投げ入れたところ今日その願いがかなった。同様の進言が複数あったのかもしれないし、また劇団の都合でそうなっただけかもしれないが、それでありがたい。

 

この(中学生くらいの年格好の)男優さんにはインパクト満点の姿を楽しませてもらっている。先週末の公演だった。舞踊ショーで背景のひとつとして「団子を食べるテルテル坊主」。そのあと井桁屋座座長酒井健之介の歌謡にこの少年男優が赤いドレスの女形で絡む。歌唱が終わると拷問シーン。春之丞座長だったと思うが、両脚をつかんで振り回された。でもめげていなかったのがスゴイ。この座員さんのお名前がいまだにわからない。

 

そんなことはさておいて今日は第3部の「花吹雪まつり」と題したラスト・ショー数珠つなぎでこの少年が登場した。立ち姿の両座長が相舞踊ひろうする「ところへこの少年と愛之介がそれぞれドレス姿の女形、というよりむしろ「女装」で出現。愛之介にカツラを奪われたと思うと、京之介座長によるプロレス足技の拷問。いくら好きで入団したとはいえ当人にとって拷問はありがたくないだろう。でもどんな荒技をかけられても敏捷さでかわせると思えるのでわたしとしては楽しませてもらった。

 

数あるラスト・ショーの中から選ばれたもののひとつだからこの少年は人気者だと納得した。

 

今月の劇団花吹雪の舞台に接するとよそが見れなくなって困っている。