美術品は展示されるコンテクスト(環境)が異なると別物に見える?

兵庫県立美術館『大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』

2017年10月3日[火]~2018年1月14日[日]

 

ひと月前サンクト・ペテルブルグに出かけたおり本家では見られなかった展示絵画を近場で見ようと兵庫県立美術館へ。

 

阪急王子公園からJR西灘、阪神岩屋をさらに南へ下る。久しぶりに見たJR西灘とその南の地域がオシャレに変身していて驚いた。摩耶埠頭を臨む海辺近くにある美術館はこの現代風に身繕いした一帯の司令塔みたいに一段と優雅だ。途中にはもう一つ2009年に開館したBBプラザ美術館がある。広々とした芸術・美術エリアだ。

 

2004年に現・兵庫県立美術館が開館するまで王子動物園近くにあった県立近代美術館(現・兵庫県立美術館王子分館 原田の森ギャラリー)を発展させたのが2004年に開設された兵庫県立美術館だ。さすが安藤忠雄の設計し美術館だけに建物自体が美術品という感じがする。

 

ヨーロッパ絵画の巨匠たちEuropean Old Master artistsの作品から16−18世紀に絞った35点が展示されている。モダンな赤地の壁に並んだ作品はたしかに21世紀の今もなお時代を超越したオーラを放つのものだと印象づける。

 

ちなみにエルミタージュ美術館では(すべて見たわけではないが)300万点以上の美術品を所蔵しているそうだ。

 

今回はとりわけOld Master artistsの作品に関心があったわけではない。本家で見れなかった作品ってどんなのかなという単なる好奇心から。

 

展覧会のために学芸員の方々は精魂傾けておいでだろうことは察する。でも、なんか物足りない。

 

本家は冬の宮殿、冬宮である。実に豪壮な建物だ。あの見る者を圧倒する壮大な建物という容れ物があるから金に糸目をつけずヨーロッパ中から収集した逸品が生きてくるに違いない。ロマノフ朝全盛期の女帝はエカチェリーナ2世(1729 ~ 1796年)エルミタージュ美術館創設を構想し実践に移すだけの力を持つ女性。偉丈夫の女性版か。この容れ物と収蔵物は彼女の権力と富の絶大さばかりでなく知性と美意識の高さを象徴している。この容れ物たる冬宮から引き離され、しかも量的にもそのごく一部に縮小されるといかに巨匠の作品群とはいえ迫力が衰えるような気がするのは私だけだろうか。

参考画像:http://www.saint-petersburg.com/palaces/winter-palace/

http://www.arthistory.ru/hermitage.htm

 

世界最大級の美術館を立ち上げたエカチェリーナ2世は傑物だと改めて思う。