大衆演劇界ではおそらく日本一の人気劇団「都若丸劇団」を久しぶりに観劇

2018年3月、大阪は羅い舞座 京橋劇場。

 

久しぶりの若丸劇団、その人気は衰えていない。千秋楽前日の29日大入り4枚。今月の観客動員数1万五千だと豪語するのも当然か。

 

劇団の(かつての)芸達者ぶりは認める。でも個人的にはそこそこの出来具合のTVお笑い番組的内容を繰り返しているだけだと思えてきてここ数年遠ざかっていた。

 

前回見てから5年以上経過しているので正直言って座員の皆さんは成長したというか老けてきている。また座員の子供さんたちがいい意味で成長して舞台に立つようになっているではないか。

 

この劇団全体としての芸の成長のなさのせいか、かつてのパワーが感じられない。ここ10年ばかり全国区の人気劇団の一つとして活躍してきたようだが、進化がない。みなさんの動き、所作がこわばってきているように思える。

 

10年余り前のこと、当時住んでいた静岡県は浜松から岐阜葵劇場へ。そこで見た都星矢さんの色気オーラはすごかった。お花をつけずにおれなかった。

 

だが、その後もしばらく放たれていたこのオーラがもはや感じられない。踊りの所作が硬い、筋肉の動きでしかない。

 

今回の観劇で一番気になったのは芝居(劇団御得意の『泥棒道中』)で見せる座長の言葉遊びがいただけない。面白くない。以前より明らかに劣化している。スラップスティック芸も同様にだめ。なのにしつこく繰り返す。

 

ここで思い出すのがドリフターズの言葉として身体を使ったお笑い芸のレベルの高さ。準備段階で積み重ねた高度な知的操作は一切感じさせずにあっさりと上質のお笑いを提供するいかりや長介率いるドリフはいまでも世界に誇れる。 またそれを幼稚園児や小学生がそれなりに理解した上で笑うという日本のコドモの高度な知的センス。 1980年代のテレビ文化は優れていたのだろう。

 

いや今もその伝統は消滅したわけではない。『クレヨンしんちゃん』の風刺精神をまだ小学校にも上がらないコドモが察知し、作者に代表されるある種のオトナと共有しているではないか。ただし大多数の大衆は別である。風刺の心を理解しない。

 

現在の若丸劇団ファンは日頃なんとなくTVを見ていて、現在の劣化したTV文化に馴染んでしまっているので若ちゃんのギャグ程度で喜んでしまうのではないか。

 

若丸座長の踊りは齢を重ねているせいで以前より一層踊りの所作が硬くなっている。 座長の舞踊に比べてキャプテン城太郎さんの踊りは(日本舞踊とは何の関わりもないにしても)動きが柔らかくて見苦しくない。

 

最近の若丸劇団は「ブラフ(はったり)が多すぎる」という人もいるが、それどころか、はったりさえないに等しい。単におもろくないだけ。 よその劇団はこの劇団を真似たらダメだ。学ぶところ1ミリもない。それぞれ自分で業界でのサバイバル策を練るしかない。

 

「ブラフ」ですらもゼロの証拠はというと、 劇中(『泥棒道中』)で剛さん演じる商人は商売の資金を懐に旅の途上。この商人は地元で悪名高い泥棒(若丸座長)にまといつかれて困っている。そこでこの泥棒をなんとかまこうと相手の注意をそらしてそのすきに逃げようとする。 商人は遠くのほうを指差して「馬と鹿が喧嘩してる」とかなんとか泥棒の関心をよそに向けようとする。ここではとりあえず成功するも泥棒はすぐ追いついてきて自分のことを「ばか」にしたなと商人をなじる。このくだり聞いてる観客も辛い。アホらしすぎる。千年前のギャグかいな。小学生にもバカにされる。このレベルのギャグもどきが頻出。痛すぎです。 ドリフのリーダーいかりやさんなら激怒するレベルだ。

 

トップクラスの劇団がこの有様では大衆演劇界で生き残れる劇団もその数がますます減ってきているのかと心寂しくなる。

 

劇団荒城が関西に進出できないものかと個人的には思ったりする。