読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2016年9月一竜座 気迫が感じられない

9月14日

久しぶりに大阪にもどってきている一竜座。月初めに一度見て、それから10日ほどして今日が2度目。前回は期待していただけに劇団の活気のなさに驚いた。今日は「座長祭」だからきっと本来の魅力をとりもどしているだろうと堺 東羅い舞座に着くまで心はワクワクしていた。

 

たしかに竜也座長は芝居も舞踊もプロの出来映えだ。

 

今日の芝居は『稲葉(因幡?)小僧シンスケ』で新作だとか。物語としては類似の作品を何度か見た気がする。シンスケという若者が草深い田舎で百姓として一生を過ごすのは嫌だと親の止めるのも聞かずお江戸をめざして出奔する。ところが例に漏れず求職に失敗し結局盗人稼業に身を落とす。一方かれの妹が兄を探して上京する。兄と妹の奇遇な出会い。しかしシンスケの正体が露見し捕縛される。重罪犯であるシンスケは死罪をまぬがれない。シンスケにとってひとつの救いは護送される途中温情ある役人の計らいで実家の父や妹としばしの別れを惜しむことだ。

 

座長の舞踊、とりわけ「飢餓海峡」や「安宅の関」に合わせた踊りは見る者に一遍のドラマを感じさせるほどすばらしい。

 

とはいえ劇団全体としては生気が失われているように思う。旗揚げ後1年たっていた昨年6月の浪速クラブでの公演で見せたインパクトあふれる舞台は今はない。座長とその右腕たる白龍をはじめとして子役の竜美紫恩にいたるまで個性あふれる役者ぞろいの一竜座。にもかかわらず各人がてんでんバラバラでまとまらない。個性の輝きがない。全員疲労困憊としか思えない。

 

劇団の重鎮たる座長と白龍ですら1年あまり前の浪速クラブ公演と比較して冴えない。ただし白龍は体調不良。のどを痛めてセリフがしっかりしゃべれないとか。明日検査を受けるそうだが、必要な休養はしっかりとっていただきたい。若手が大勢いるので一時的な欠員状態はカバーできるはずだ。

 

こういう劇団沈滞期を抜け出すには劇団重鎮のお二人ではなく中堅どころの竜美獅童と風月光志が経験と若さのパワーを発揮して上演内容の構成と演出に集中するべきではないか。今評判の映画『超高速 参勤交代 リターンズ』(2016年)に登場する湯長谷藩家老相馬兼嗣(西村雅彦)みたいに窮地に臨んでこそ有効な解決策が思い浮かぶと期待する。(ちなみに正編というか前編というか2014年封切られた『超高速 参勤交代』はgoogle.comに100円支払えば即時youtubeで視聴できる。)

 

劇団重鎮である座長と白龍はジタバタする必要はない。お二人は「権威」の象徴としてどっしり構えていてほしい。象徴的存在は生身(なまみ)の次元を超越している。現実的感覚からすると「無」である。しかし否定しようのない実在性を帯びているのだ。その証拠にお二人の舞台姿、特に舞姿は美の極地に達している。

 

最後にひとこと。風月光志の「ヒトミばーちゃん」が見たい。きっとご本人も「ヒトミばーちゃん」で再ブレークしたがっていると勝手に信じている。