男と女が入れ替わる(gender role reversal / gender fluidity)

森川劇団 2017年7月 池田呉服座(大阪府池田市

7月20日お芝居外題『変な男と変な女』

主演:劇団座長 森川竜二・劇団「絆」座長 錦連

 

この芝居始まってしばらくはよその劇団などで何度か見たと思った。しがない茶店を営む老婆が土地のヤクザから借金と取り立てで苦しめられる。苛立ってきたヤクザは返済できないなら(なぜか孫みたいな歳の差がある)娘を一家の親分の女房に差し出せと迫る。そこへ通りかかったのが正義感の強そうな若侍。早速、娘の窮地を救う。こういう出だしはおなじみだ。この後は恥じを書かされたヤクザ一家が若侍に仕返しをしようとするも結局正義の味方若侍の勝利という展開のはずだ。そう思えた。

 

しかし今回はもっと手が込んでいたというか、ウィットに富んだ喜劇に仕上がっていた。ヒーローの若侍にこの日ゲスト出演した劇団「絆」座長 錦連を絡ませる。錦連は小股の切れ上がった芸者という設定。錦連が得意とする役柄だ。惚れ合った二人は最後には夫婦になる。

 

ただし、ここでストーリー展開にみごとなひねりが加えられていたのだ。婀娜っぽい、実に色っぽい芸者が実は男だったとわかる。まるで弁天小僧菊之助みたい。この女はなんでも男ばかり8人きょうだいだそうで、一人くらい娘が欲しいと思った親が普段から女の格好をさせたのが本人の身についてしまったとのこと。一方、一見凛々しい若武者は女ばかりの三姉妹の一番下。これまた親が後継の男子が欲しいという思いからこの「娘」に男装させ剣の修行も積ませた結果、外見はどう見ても腕の立つ美剣士が出来あがった次第。最後に二人が男女の入れ替わりに不信を抱く周囲を納得させるために着物の裾を捲り上げる。ただし客席からは彼らの後ろ姿しか見えない。ブツを持つ者と持たざる者の大逆転だ。このオチ、観客には大受け。どうりで外題『変な男と変な女』となるはずだ。

 

このアイデアは森川劇団独自のものだろうか。太夫元の梅沢秀峰(前・二代目森川長二郎)の発案か。それとも竜二座長かな。普段から豊富な機知で客席を沸かす二人ならそういう仕掛けを考え出すのはお手の物にちがいない。

 

座長のジョークがなかなか味わい深いことはまだ2回しか観劇していない私にもわかる。こいう笑いのセンスを持つ座長ならこの芝居ばかりでなく次々に笑いを秘めた芝居を繰り出していだだけると期待している。また芝居以外のショーなどでも楽しませてもらえそうだ。現に、これは伝聞なのだが、今月前半で一度人気TV番組『笑点』の大喜利コーナーを模したイヴェントがあったそうだ。観客席が大爆笑だったとか。座長、竜馬副座長はじめ座員さんたちがあれこれ頓知をきかせた発言を連発したらしい。中でも「新人」座員こと一代新之助が圧倒的優位を誇ったことは印象的だったと聞いた。

 

余談ながら、第三の性?ジェンダーX?、男であるようで女でもあるような、社会的男女の位置づけが定まらない (gender fluidity) というまことに現代的な問題については次のサイトあたりがおもしろいかもしれない。

http://spotlight-media.jp/article/299123053496116820 http://www.urbandictionary.com/define.php?term=gender%20fluid http://www.revelist.com/style-news/vogue-apology-gigi-zayn-cover/8485/default/4